―――お仕事をするに当たって心掛けていることは。
一番根っこの部分にあるのは、パン屋さんをやるからには成功してほしいということです。その気持ちは、かなり強く持っています。ですから、お客様がパン屋さんを開くに当たっての抱負や希望を丁寧にお聞きした上で、それに対する私どもの意見をお伝えし、さらに議論を深めていきます。打ち合わせを十分すぎるぐらい行った上で、お客様と私どもの両方が「これなら成功できる」と十分に納得できた時点で、初めてプロジェクトをスタートさせるようにしています。
―――これまで手掛けてきたお仕事の中で、特に心に残っているプロジェクトは。
これまで、様々なパン屋さんのオープンをお手伝いしてきましたが、ありとあらゆるケースがありました。「350万しかないので、これで何とかパン屋さんを開きたい」というお客様がいました。かなり苦労はしましたが、この案件も何とか実現でき、いまでも小規模ながら、地道に続けていらっしゃいます。
―――350万なら独立のハードルも低いのでは。
ただ、すべての案件で、これほどまでに安くパン屋さんが開けるとは限りません。この案件の場合は、たまたま、まだ工事中だった物件に出合い、そこの大家さんに気に入ってもらえて、仕上げの工事を、パン屋さんを開こうとしていたお客様の希望を聞いて行ってくれたので、排気や水回りの工事費がゼロで済んだというのが大きかったですね。厨房と売り場を合せても10坪のお店ですが、お一人でパンを作り、地道に頑張っていらっしゃいます。
―――一人ひとり違う独立希望者の要望にきめ細かに対応しているのですね。
そうです。私どもは、お客様お一人お一人の様々なこだわりや要望を最大限に生かして、できるかぎり希望の予算の範囲内で実現する最大限の努力をしています。そして、お客様お一人お一人のこだわりや希望が、ビジネスとして成立するような形にすることに努力を惜しみません。
―――ベーカリーを作るに当たって大切なことは。
色々ありますが、まずは物件選びですね。大切なことは、十分な売り上げが望める立地であることはもちろんですが、意外と重要なのが、排気を直す必要がないとか、壁がまっすぐかとか、水回りは直す必要がないかとか、床が平らであるかとか、そういう基本的な条件を確認することです。
こうしたことに費用が掛かってしまうと、投資額は一気に膨れ上がってしまいます。逆にこうしたことに費用をかけずに済めば、意外なほど少ない投資で、パン屋さんが開ける可能性が高まります。
―――小規模の個人店の店舗開発に定評があると聞きました。
小規模の個人店を扱うことが多いのですが、一方で大手有名チェーンのパン屋さんの新規出店のお手伝いをすることも多くあります。この場合は、投資額は比較的多く、資金に余裕があることが多いので、お客様の要望を十分に実現できることが多くなります。
しかし、成功するためにクリアしなければならないことは、大手であろうが、小規模の個人店であろうが同じことが多いので、大手が潤沢な資金で実現することも、知恵を絞りだせば、少ない資金でできてしまうことも、往々にしてありますので、そこが努力のしどころだと思いますね。
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